中学3年生のときだったと思う、善福寺川沿いの社宅にレコードプレイヤーが届いた。音楽好きの母が買ったのだ。スッペの軽騎兵序曲が入ったLPと若いころダンスをしていた母が好きなラテン音楽のLP2枚が一緒に届いたと記憶している。
僕が初めて買ったレコードはバッハの組曲第2番ロ短調とハイフェッツのチゴイネルワイゼン、ロンドカプリチオーネだったと思う。レコード針が使えなくなるまで何度も繰り返し聴いた。いずれも中学校の音楽の時間に習ったものだ。
大学1年のときだった、今度は大きなステレオセットが届いた。阿佐が谷駅近くの家の2階に、このときも予告なしに届いた。母は父との関係がもはや修復できないところまでに至ったことを知っていたのだ。それで、恐らく勝手に家を買い、ステレオセットを購入したのだ。
大学1年の途中でやめた僕は2階の8畳間に寝そべって、よくバッハを聴いた。妹の好きだった井上陽水、サイモンや拓郎も聴いた。荻窪のミニヨンにもよく行った。本を買いに紀伊國屋に行った帰りに風月堂にも行ったものだ。
先日、PC用スピーカーを買った。格別いいものではないが、サブウーファー付きのシステムだ。ずっとPC内蔵の酷い音しか聞いていなかった者には、まさに天地雲泥の差だった。衝撃に近いものを感じたぐらいだ。