母を乗せた車いすを押しながら、西荻窪駅から善福寺公園の上下の池、井草八幡の周辺を散策した。僕と妹が通った井荻小学校、井草幼稚園、級友たちの家々はあるが、僕の家族が住んでいた社宅はなかった。母の記憶の奥底に沈んでいるのだろうか。
善福寺池がよく整備されていて、ありがたかった。樹々に囲まれマコモ(真菰)が群生する下池(写真↓ 子どものころは「新池」と呼んでいた)に魅了された。東京都の公園管理に感謝しなければなるまい。 認知症が進行している母にとって50年ぶりの訪問だったが、母の記憶は確かだった。西荻窪駅、よく通った小路、地蔵坂、そば屋、荻中、井荻小学校、十有余年くらした家、家の裏手にあった畑、井草幼稚園、井草八幡、善福寺池など。「蓮池を前に過去世と遊ぶ母」
蓮華の向こう、樹々の手前にマコモが見える。マコモの英名は Manchurian wild rice だそうな。満州は45年前に母と別れた父が大学時代を新京(いまの長春)で過ごし、祖父が若くして事故死した地である。祖母は、夫が馬賊に殺されたと言っていた。僕はそこで酷く酩酊したことがある。