久しぶりに韓国映画をみた、そして大いに泣いた。映画の原題は Keys to the Heart; 韓日台中で 그것만이 내 세상; それだけが、僕の世界; 媽寳兄弟; 那才是我的世界。映画の内容にふさわしいのは、Keys to the Heart だろう。
なぜ、あんなに泪が出たのだろう。障害者で天才ピアニストのテジン(弟)の純真さだろうか。若いころ夫のDVに耐えられずに子どもを置いて家出し、いま晩年を迎えてガンで死の淵にある母親の生きざまだろうか。彼女のテジンに対するひたむきな愛情だろうか。
母親が働いている食堂に偶然現れたジョハ(兄)は、嫌っていた彼女と数十年ぶりに再会する。彼女に乞われ、無料で寝場所を得られるからという理由で、テジンとゝもに暮らすようになったジョハ(兄)。彼にテジンを託そうとする彼女は、弟に対する盲目的な愛情のあまり、何かにつけて悪態をついてジョハを傷つけてしまう。
ピアノを弾くなど男のする仕事でないと考えるジョハは、クラシック音楽とは縁もゆかりもない世界にいる。だから、弟にも彼と同じようにちらし配りの仕事をさせる。だが、弟はまともにちらしを配ることができない。そんな弟が、街中にあるピアノを弾いて人を集め、少なからぬ金を得たことに驚き、弟の才能を認めて、いつしか弟をかばうようになるジョハ。
最後、ジョハは少年の彼を捨てた母親の愛情を認め、服役中の父親に面会する。粗暴な彼に向かって、出所後に母親を訪ねるなと訴え、訪ねたら少年のころ殴られた分を殴り続ける、と怒鳴りつけるジョハの哀しさだろうか。
とにかく泪が止まらなかった。どの場面でも、純真無垢なテジンが弾くピアノの圧倒的な情感と激しい演奏がなければ、あんなに泪を流さなかっただろう。音楽に掻き乱されてあんなに泪を流したのは初めてだ。