非現実的な、あまりに非現実的な韓国ドラマ(6)

韓国ドラマ Because this is my first life (이번 생은 처음이라  日本版: この恋は初めてだから) が文句なくおもしろかった。

主人公のセヒは学生時代に女性と同棲していた。その女性が妊娠し結婚を決意するが、両親の強い反対に遭って孤立するなか女性が流産し、二人は別れた。その後、彼は両親と訣別し、非婚を選択する。彼女とのことが彼を人間嫌いにさせたのだろう。

その後、彼は 2LDK のマンションを購入し、ローン返済のため、その1室を独特な契約にもとづいて会社の同僚に貸与する。その同僚が契約違反で追い出され、新しい同居人を探す。友人の紹介で候補者が現れ、名前のジホから判断して男性と思ったが、やって来たのは女性だった。

セヒは理づめで考える合理主義者で、少し変わり者である。恋愛と結婚カップリングに関連するSNS開発会社で、有能なチーフプログラマーとして活躍している。同じ会社のマ代表は学生時代からの親友だ。

非婚主義のセヒは一匹の猫を飼っている。名前はなく、コヤンイ(韓国語で猫の意)と呼ばれている。同居人はごみの分別に協力するほか、猫に餌を与え、世話しなければならない。私生活には一切干渉せず、ほとんど会話もない。家主と借家人の関係を契約に定めている。

借家人の候補者ジホは地方出身でS大学国文科を卒業した秀才だが、今は無名の脚本家だ。弟が結婚して実家に住めなくなり、部屋の確保が切実だった彼女は、男性と同居すべきか悩んだ末、家族や友人にはそのことを告げずに契約に署名する。

こうして、二人の男女が家主と借家人という関係で一つ屋根の下に住むことになる。家主は三十代後半の独身主義者で、借家人は恋愛経験のない三十歳の女性である。そんな二人が時間とともに近づき、親しくなっていくが、越えがたい部分が露呈され距離が遠ざかることもある。そして、セヒとジホは互いに引かれていく。

セヒは結婚に対する親の圧力を避けるためという理由で、家賃の割引を含む契約結婚を提案する。職を失っていたジホはその提案を受け入れ、実際に結婚式を挙行し互いに親族を紹介する。ただし、家主と借家人という関係はそのままである。

こういう特殊な契約関係にある二人の気持ちの揺れが、真摯であるがゆえにコミカルに映る。ジホの高校時代の親友とセヒの親友のマ代表が二人を見守りながら、うまくリードしていく。男どうし女どうしの友情もうるわしい。

登場人物のセリフがよく吟味されている。マ代表と脚本家志望のジホのセリフがとくに味わい深い。恋愛感情の機微や韓国らしい友情関係、男性の嫉妬や会社内のセクハラなどもよく描写している。

賃貸借関係を土台にした契約結婚は非現実的ではあるが、その設定が男女関係の気持ちのずれを効果的に見せてくれる。しいて言えば、主要な登場人物が、例によってすべて関連づけられ、セヒとジホそれぞれの友人がみな結婚するハッピーエンディングはあまりに非現実的ではある。

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