70年代初め、二葉亭四迷(1864-1909)に凝った時期がある。新書版の全集を神保町の古本屋で購入し、小説や翻訳作品ほかを読んだ。原著者ツルゲーネフ(1818-83)の「片戀」が好きだった。最近50年ぶりに「浮雲」を読んだら、ところどころ吹き出すほどのおもしろさだ(第1編1887年6月、第2編88年2月、第3編90年7-8月発行)。
ようやく官吏になったもののすぐに罷免された二十代前半の男が主人公だ。官吏になるや、ちやほやして娘を嫁がせようとした叔母が、彼が免職になるや、豹変して辛くあたる。はては、主人公の元同僚に乗り換えようとする世の理不尽さを嘆きつつも、その娘に対する思いを断ち切れない内海文三、言文一致文体の極致ともいうべき作品か。

夏目漱石(1867-1916)の「三四郎」(1908)を読んだあと、二葉亭の「浮雲」を読んだ。前者は大学生、後者は官吏に採用されながら罷免された、いずれも真面目で不器用な男だ。両者の異性に対する態度は驚くほど似ている。
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