「銀河鉄道の夜」を読む

「銀河鉄道の夜」初期形一と題された文章を縦書き文庫で読んだ。「銀河鉄道の夜」の草稿のようなものだろうか。同文庫には作品検索の上から順に次の4版が収録されている。

  1. 「銀河鉄道の夜」初期形一 11,458字
  2. 銀河鉄道の夜 40,750字
  3. 銀河鉄道の夜 日本文学100選 76,361字
  4. 銀河鐵道の夜 44,751字

後半部分で列車が停車して同乗客が降り、友人のカムパネルラも去る。そのあとでジョバンニは「さあ、やっぱり僕はたったひとりだ。きっともう行くぞ。ほんたうの幸福が何だかきっとさがしあてるぞ」と言う。

賢治が法華経(ほけきょう)行者(ぎょうじゃ)を任じ、デクノボウのような不軽菩薩(ふぎょうぼさつ)(はん)としていたことを思う。そして、ジョバンニの独白が意味するところを考える。

…そして見てゐるとみんなはつゝましく列を組んであの十字架の前の天のなぎさにひざまづいてゐました。そしてその見えない天の川の川の水をわたってひとりの神々しい白いきものの人が手をのばしてこっちへ来るのを二人は見ました。けれどもそのときはもう硝子の呼子は鳴らされ汽車はうごき出しと思ふうちに銀いろの霧が川下の方からすうっと流れて来てもうそっちは何も見えなくなりました。
…そのときすうっと霧がはれかゝりました。どこへ行く街道らしく小さな電燈の一列についた通りがありました。それはしばらく線路に沿って進んでゐました。そして二人がそのあかしの前を通って行くときはその小さな豆いろの火はちゃうど挨拶でもするやうにぽかっと消えて二人が通って行くときまた点くのでした。ふりかへって見るとさっきの十字架はもうまるでまるで小さくなってほんたうにもうそのまゝ胸にも吊されさうになりさっきの女の子や青年たちがその前の白い渚にまだひざまづいてゐるのかそれともどこか方角もわからないその天上へ行ったのかもうぼんやりしてわかりませんでした。
…ジョバンニはまるで鉄砲丸のやうに立ちあがりました。そしてはげしく胸をうって叫びました。「さあ、やっぱり僕はたったひとりだ。きっともう行くぞ。ほんたうの幸福が何だかきっとさがしあてるぞ。」そのときまっくらな地平線の向ふから青じろいのろしがまるでひるまのやうにうちあげられ汽車の中はすっかり明るくなりました。そしてのろしは高くそらにかゝって光りつゞけました。「あゝマジェランの星雲だ。さあもうきっと僕は僕のために、僕のお母さんのために、カムパネルラのためにみんなのためにほんたうのほんたうの幸福をさがすぞ。」
…「僕きっとまっすぐに進みます。きっとほんたうの幸福を求めます。」「あゝではさよなら。」博士はちょっとジョバンニの胸のあたりにさわったと思ふともうそのかたちは天気輪の柱の向ふに見えなくなってゐました。
縦書き文庫「銀河鉄道の夜」初期形一より抜粋

One thought on “「銀河鉄道の夜」を読む”

  1. このを宗教的な求道の物語として読むことができる。キリスト教的な使徒(ヨハネ)と仏教的な菩薩行の実践者(不軽菩薩)という対比が可能だろう。賢治の立場に立てば菩薩道になるが、キリスト教徒たちは反論するに違いない。

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