娘夫婦に連れられ筑波山に登山した。「日本百名山」を制覇しようという彼らに付いていった。標高877m(女体山)ながら、大きな岩がごろごろしていて歩きにくい、侮れない低山だ。関東平野の一角に隆起した山塊は全体が巨岩の塊りのようだ。奇岩も多く、神話や伝説にちなんだ説明が付いている。女体山から男体山につながる稜線沿いにケーブルカーとロープウェイの駅があって、茶店が並ぶ光景は素直に受け入れられない。
右脚が半ば麻痺している僕にはきつい山だ。登り下り合わせて5時間、最後は筋肉痛で動けなくなる寸前だった。百名山をまた一つ制覇したという彼らのような達成感はないながら、まだ歩けるぞ、という妙な自信感に満足した。
試験直前の勉強に没頭しているはずが、受験申し込みの不手際で受験できなくなった。自分のせいだから誰を怨むこともできない。ただ、自らの愚かさを嘆くばかりだ。こんなとき、何も考えずに山道を歩くことにまさる治療法はない。馬鹿につける薬はないのだから。