玄東實さんが語る(2) 金大中大統領

玄東實さんが語る(1)よりつづく

歴史問題と金大統領の名演説

–: 注目を浴びる「歴史の清算」問題をどうみていますか。

玄: この点も個人的な見解ですが、韓国の現代史は日本の戦後と同様に複雑な背景があります。国際政治の思惑に翻弄されてきた、ままならなかった歴史と言えるかもしれません。例えば、8月15日は日本では「終戦記念日」ですが、韓国では「光復節」として日本支配からの解放を意味します。

一方、8月15日を「唐突な解放の日」と解説する韓国の識者もいます。私の考え違いかもしれませんが、“唐突な”との表現には、日本の植民地時代における韓国国民の状況を悲観的にだけ捉えていたのではない感情が見え隠れしてはいないでしょうか。

現在もそうですが、韓国では日本との関係が悪化すると、歴史問題がいつも注目されます。ただ、これは、現在の日本に対する評価とは関係のない文脈で語られていることに注意が必要です。多くの韓国国民は本心では、日本ともっと友好を深めたいと望んでいると思います。

では、歴史の清算問題とは何かという話になります。それは具体的な政治問題の解決もあるでしょうが、むしろ韓国の文化や歴史・思想・哲学に対する自信の回復を指しているのではないか、と私には思えます。つまり、戦火で失われた韓国本来の姿を取り戻したいがために、歴史の清算問題を引き合いに出さざるを得ない、高度な政治的事情があるのではないでしょうか。しかし、そのために歴史問題を持ち出すことは、当然、日本人の感情を強く刺激することになります。

韓国社会は見違えるような発展を実現していますが、戦後の韓国経済は確かに大変な苦労をしてきました。韓国で大ヒットした映画『国際市場で逢いましょう』(2014年公開) を観ていただきたいと思います。韓国が歴史の清算にこだわる背景の一部を感じ取ってもらえるのではないでしょうか。

これらに関して、金大中・元大統領は、日本の大衆文化開放の歴史的意味に触れ、「1500年以上の日韓交流の歴史の中で豊臣秀吉による軍事侵攻(文禄・慶長の役)と戦前の植民地時代を含めても不幸の歴史は40年程度。そのことをもってして、両国の長い友好の歴史を全否定してよいのか」との趣旨の国会演説をしています(1998年10月8日金大中大統領日本国会演説文)。寛容の精神に富む誇り高い内容だと今もって感じます。(以下、同演説文の原稿を参照ください)

日韓両国は現在の状況をもっと肯定的に捉えるべきだと思います。確かに、「親日親韓」の関係はベストなのかもしれませんが、最小限の範囲でもお互いを理解し尊重しようと努力する「知日知韓」の関係を再スタートさせればよいと思います。両国には目に見えない深い絆が既にありますから、次代を担う青年世代においては理解を深め合う作業は難しいことではないでしょう。

국제시장(영화) – 나무위키 –

3 thoughts on “玄東實さんが語る(2) 金大中大統領”

  1. 1998年10月の日本の国会における金大中大統領の演説は経験と歴史的信念に裏打ちされた格調高いスピーチです。日本と韓国の中高校の教科書に二つの言語で載せてもらいたいと思いました。日韓の中高生が英米の首相や大統領の演説を学ぶように、日本の中高生が韓国大統領の演説を韓国語で聴いて理解する。あるいは、韓国の中高生が日本語で理解する。そんなことが実現できればいい、ぜひ実現するべきである、と考えます。

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