ここで、韓国ドラマの多くに共通すると思われる登場人物の類型とその人間関係、構成要素、場面設定などを一視聴者の立場でざっくり整理しておきたい。
登場人物の類型
- 記憶喪失者: 途中で記憶喪失者あるいは痴呆になり、その記憶回復までがプロットの中心に置かれ、記憶回復が悪事の発覚する伏線となる。認知症を扱ったものはみたことがない。
- 悪事を重ねる人物: その悪事の展開がプロットを進行させる。視聴者の立場では、悪事や嘘が明々白々だが、登場人物の多くがそれに貶められ、嘆き悲しむ。
- お人好し: 情に流される純情派というより苛立たしいお人好しが多い。すぐ感情的になり、嘘や噂に振り回され、簡単に悪だくみに騙され、繰り返し騙される。
- 犯罪者: 冤罪あるいは悪者に嵌められて罪を着せられた人物、その復讐がプロットの伏線となる。悪者はあらゆる手段を駆使して「邪魔者」を抹殺しようとする。
- 上層の人物: 傲慢、人間性を欠落した、人格的な破たん者として描かれることが多い。すぐ感情的になり、自分の意に添わない者を追放し、拉致して、反省するところがない。
- 下層の人物: 勤勉で、優秀な学校成績や才能に恵まれ、家族愛を大事にする人格者として描かれる。男女とも裕福な家の異性に好かれることが多いが、恋愛はほとんど成就しない。
登場人物の人間関係
- 社会的な階層を異にする者たち(持てる者と持たざる者)の人間関係、羨望・蔑視・不信・理解不能などが互いに交錯する。
- 家族関係、とくに母親と息子、嫁と姑、祖父母と孫、三世代家族における最年長者の我が儘と傲慢、世代間の格差ないし断絶などが、誇張されて提示される。
- 子どもの結婚に口出しするどころか、強制的に結婚させようとする親が多い。特に社会的経済的な上層に属す者に多い。子どもはそれに反抗するが、親の策略に嵌められることが少なくない。
- 資産家の父親または母親と子ども、資産家の祖父母と孫、中下層の人々に対する蔑視が悪事につながる。
- 登場人物の多くが恋愛、家族関係、姻戚関係、同窓関係、敵対関係、金銭の貸借関係等で、あたかも親戚関係のようにつながってしまう。
- さまざまな形の復讐と嫉妬が主題になることが多い。男女老若ともに嫉妬心が誇張されて表現される。
- 上下層共通の価値観として、金権主義、溺愛型の血縁至上主義、それと類似の恋愛至上主義、先輩後輩関係、家族主義などがある。
- 善玉と悪玉が明確に分けられるが、勧善懲悪とはいい難い。悪徳の栄えのようなプロットが延々と続く。
これらの登場人物とその人間関係が、韓国の実社会の様相をかなりの程度まで反映しているのだろう、と想像するのは自然なことだ。にもかかわらず、韓国ドラマを「非現実的」だといって批判するのはおかしい、と考える人がいるかもしれない。